koji65の日記

不動産エージェント稲垣の日記です

神宮の花火

昨日は神宮の花火大会を観に出かけたが、チケットがないと一切その付近で立ち止まって花火鑑賞することが禁止されていた。

それでも大勢の人々が青山通りの歩道に集まって来て、警察官や警備担当係員からほとんど罵声に近い「路上で立ち止まって花火を観ることは出来ません!ただちに移動してください!」と拡声器の大音量と警笛を吹き鳴らしながらと大騒動だった。

そんな状況下で歩きながら観るぶんには注意されないのでしばらく花火を横目に見ながら散歩気分で眺めるしかなく、もう少し眺めていたかったけど歩き続けるのもたいへんなので諦めて青山通りを渋谷へ向かって行く。

まず青山ベルコモンズだった所に今は違う建物があるのを見て、以前はあそこの上に自分が働いていた会社と同系列のテニススクールがあったなどと遠い昔を思い出す。

その先の青山通りもその頃から比べるとだいぶ様変わりしていて、叔母たちと姉と息子が通っていた学校だけは変わらずそのままにあることに安心を覚える。

しかし、そこからさらに進み宮益坂を降りた先の交差点に来ると「なんだこの巨大で異常に高い建物は?!」と目を見張る。

ヒカリエには何度か来ていたから知っていたけど、その初めてみたビルは「渋谷スクランブルスクエア」だった。

今までにいろいろと高層ビルは見てきたが元々の場所にとても馴染みがあるせいか、その異様に大きく高い建物にひどく違和感が生じたのかもしれない。

渋谷には9歳まで住んでいて大学もこの駅から歩いて通っていたので、この最近の再開発での変貌ぶりにはただ驚くばかりでなく失われていく故郷へのノスタルジーの念にかられる。

もはやその幼少期に見ていたもので残っているのは場所が移動されてしまったが、忠犬ハチ公のブロンズ像だけかもしれない。

不動産業に関わるものとして都市開発は商売の大きなネタであるのだけど、こんなに「古きを軽んじて破壊し、新しきを尊重して生み出す」ということには手放しで賛同というわけにはいかない。

先ほど見てきた花火大会の開催地である神宮の森も再開発で夥しい樹木の伐採をする計画と聞くと、それは絶対にやめて貰いたいと強く願う。

そんな私の思いなど為政者にも大企業の開発推進者にも全く届かずで、けっきょく神宮の森は破壊されてしまうだろう。

少し憂鬱な気分でスクランブルスクエアの隣にある渋谷ストリームに入り、そこにある美味しそうな店を眺めながらスクランブルスクエアに繋がる通路を歩いていく。

するとその通路の脇に何か見覚えのある形のものがあった。

それはかつての東急東横線渋谷駅ホームの壁際を飾っていたメガネのレンズみたいなオブジェクトだ。

大きさはまるで違うのでかつてのものを模して再現したのだろうが、それは正しく私が小学生の頃からよく知っていたあの特徴のあるメガネレンズ型の飾りだ。

ハチ公以外にも懐かしい昔を偲ぶ縁のものがこんな所に置かれているとは、巨大再開発の推進者グループのなかにも私と同じような気持ちを持っている人の粋なはからいなのではないだろうか。

そう考えると少しだけこの変わり果てた故郷の町への親しみがまた持てる気がした。